原型・試作課

橋本 康平 KOHEI HASHIMOTO

2016年入社

学生時代のことを教えてください

高校は普通科の美術コースへ進み、絵画、彫刻、デザインといった様々な方向の美術を学んでいました。ちょうどその頃にはじめた流木による彫刻制作が自分の原点であり、自然によって削り出された形状を自由に繋げ合わせることで創作への無限の可能性を感じ、作品づくりに没頭していました。
その後は、美術大学の彫刻学部へ進学し、粘土、石、鉄、石膏など、あらゆる素材を使って作品にしてきましたが、その中でも「木」に魅せられて「木彫」を専攻しました。
木目から着想を得て自分が思うように造形できること、素材の温かさを感じることなど、細かい作業から大胆な作業、小さなものから大きなものまで幅広く制作できることが、「木」という素材の魅力でした。作品としては動植物をモチーフとしたものが多く、創作活動を始めると、気づいたらご飯を食べてないとか、もう外が暗いとか、とにかく集中すると止まらなくなる性分でした。

ミキモト装身具との出会いは?

学生時代に、ある方からの依頼を受けて作品をつくる機会を頂いたことがあり、その方が期待する以上のもので応えたいという気持ちが強く心に残っていました。そして、完成した作品を想像以上に喜んで頂けたことは、自分の「造形感」が評価されたであろうことと同時に、心が満たされる感覚がありました。それまでは、ただひたすらに作品を作り続けてきた創作活動でしたので、人から「ものづくりの感性」を認めてもらえたような充実感がありました。
ミキモト装身具を知ったのは、大学内での企業説明会でした。高校時代から立体造形に打ち込んできた時間と培ってきた造形力を活かしたいとの思いから「形にする仕事」がしたいと考えていて、ものづくりの企業に絞って就活していました。
大きな作品を創作したこともある自分にとっては、小さくても存在感のあるMIKIMOTOのジュエリーには、ギュッと凝縮された技術が詰まっているように思え、時間をかけて技術を積み重ねていく手仕事にとても魅力を感じました。身につける人の心を満たすジュエリーとしての「美しい造形」と、自分が今までに取り組んできた「立体造形」の創作とが結びつくと考えました。純粋に美を追求するといった企業理念への共感とともに、その制作に携わりたいと強く思いました。デザイナー職と技術職の併願で採用試験に臨み、技術職として内定を頂きました。

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現在の仕事は?

原型試作課に所属しています。CADソフトを使って商品の3Dデータを設計し、樹脂モデルを製作するのが主な仕事です。デザイナーが描いたデザイン画をCAD上に取り込んでアウトラインを描き出し、側面図を参考に肉付けしながら「立体」に置き換えていきます。設計中は、輪郭や面に歪みがないかを何度も確認し、微調整を繰り返しながら作業を進めます。特に複雑なデザインや高度な仕組みを持つ機能性の高いものについては、先輩の指導・サポートを受けながら取り組んでいきます。その後は、設計した立体データを光造型機(3Dプリンター)に送り、樹脂モデルを出力して実際に自分が設計した形状を確認していきます。
もちろんデザイン画をそのまま立体データにすればよいといったものではありません。機械的な立体設計から生み出されるジュエリーはあまり魅力がなく、ジュエリーとしての「美」を表現するとともに、身体への装着感といった機能美までをも追及していく当社の伝統は、CAD設計であっても変わることはありません。CADによって機械的にものを作り出すのではなく、人が身につけるジュエリーとして、より柔らかく手仕事に近い造形感を表現していくことは、先輩から特に指導を受けているポイントです。
また、出力された樹脂モデルには細かい層がありますので、これを顕微鏡で確認しながら丁寧に取り除いていきます。この樹脂整形の作業を通してジュエリーの「造形感」を養い、わずかな設計の違いが後の工程にどのような影響を与えていくのかを日々学んでいます。

今後の抱負は?

ジュエリーの制作は、商品そのものの「美しさ」を追求するだけでなく、人の肌に直に触れることから「装着感」はとても重要になります。見た目の美しさだけではないジュエリーとしての心地良さは、手の仕事、手の感覚を大事にしている当社だからこそ、引き継がれてきた技術ではないかと思います。
私はCADを使った設計を学んでいるところですが、そのジュエリーを付ける身体の部位にフィットするよう裏側は特に丁寧に、また、強度を保ちつつも地金が重くならないようできる限り工夫するなど、手仕事の伝統的な要素はCAD設計においても同じですので、学ぶことが本当に多い仕事だと感じています。
現在担当している仕事だけでなく、各工程の知識・技術を吸収し、将来は自分も様々な仕事を任されて、誰からも頼られるクラフトマンになりたいと思います。創業以来110余年という、途方もない歴史を持つ会社の伝統を引き継ぎ、誇れる仕事をしたいです。

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